Complete text -- "不正融資の相手方と共同正犯の成否"

29 November

不正融資の相手方と共同正犯の成否

 またもや、共同正犯シリーズです。今回は最決平成15年2月18日刑集57巻2号161頁の住専の不動産会社への融資案件が不正融資で、融資担当者が特別背任(商法486条1項:ただし平成9年当時のもの)に問われた事件です。このとき、融資を受けた会社の代表取締役にも特別背任罪の共同正犯が成立するかどうかが問題とされました。
 大きく分けると、共同正犯性という点と共犯と身分の問題とに分けて考えることができます(ただしこれは単純化しすぎ)が、判旨は共同正犯性について判示しています。

#不正融資の案件は、融資を受けた側についても、共犯の成否が問題となると思うのですが、試験に出しても、このことに触れる者はほとんどいないです。司法試験の答練でもそうです。二重譲渡では第二譲受人の共犯の成否を書くのに、バランスが悪いですね。予備校テキストに毒されているとこういった応用が利かない者が増えてきます。まぁ、判例がでたので、予備校本も追加するでしょう。なお、藤木英雄『刑法演習講座』にはしっかりとこの論点が言及されています。
 決定要旨は面倒なので、刑集のものをそのまま引用。
「住宅金融専門会社の役員ら融資担当者が実質的に破たん状態にある不動産会社に対して多額の運転資金を継続的に実質無担保で融資した際に,上記不動産会社の代表取締役において,融資担当者らの任務違背,上記住宅金融専門会社の財産上の損害について高度の認識を有し,融資担当者らが自己の保身等を図る目的で本件融資に応じざるを得ない状況にあることを利用しつつ,迂回融資の手順を採ることに協力するなどして,本件融資の実現に加担したなど判示の事情の下では,上記代表取締役は,融資担当者らの任務違背に当たり,支配的な影響力を行使することや,社会通念上許されないような方法を用いるなどして積極的に働き掛けることがなかったとしても,融資担当者らの特別背任行為について共同加功をしたというべきである。」

 支配的影響力の行使、社会通念上許されない方法による積極的働きかけがなくとも、共同正犯を認めることができるとしている点は、最近はやっている中立的行為による幇助(日本の場合は中立的行為による広義の共犯)との関係でも注目すべきものでしょう。
 正犯者の任務違背行為、被害者の財産的損害の認識は、故意の問題としてみるならば、当然要求されるべきものです。ここでは「高度の」認識となっていますが、このあたりは、被告人が銀行融資に精通している等の事情から、無担保状態による貸付であることを十分に認識し、貸付担当者が保身等の図利目的を有して任務違背の融資をせざるをえないことを認識していたということから基礎づけられるようです(これは報告者の指摘です)。
 この判断は、島田聡一郎「広義の共犯の一般的成立要件」立教法学57号(2001年)116頁、あるいはそこに引用されている藤木説の影響があるような気がします。
(続く)
02:58:30 | dolus | | TrackBacks
Comments

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