Complete text -- "犯罪の共謀ってなんやの?"

20 November

犯罪の共謀ってなんやの?

 今朝は、あることでめまいがして、ようやくショックから立ち直れました(^^ゞVertigo! 当面、物忘れは病気のせいにしておきます。もっと酸素を!

 共同正犯ばかりですが、まぁ、ふだんの講義であまりしっかりやらないところはゼミでやるしかないということもあります。で、今回は、最決平成15年5月1日刑集57巻5号507頁。某暴力団の組長が、手下のボディーガードに拳銃を所持させたとして、銃刀法違反について共謀共同正犯が肯定されたものです。

・ 被告人は,スワットらに対してけん銃等を携行して警護するように直接指示を下さなくても,スワットらが自発的に被告人を警護するために本件けん銃等を所持していることを確定的に認識しながら,それを当然のこととして受け入れて認容していたものであり,そのことをスワットらも承知していた
・ 被告人が幹部組員に対してけん銃を持つなという指示をしていた事実が仮にあったとしても,前記認定事実に徴すれば,それは自らがけん銃等の不法所持の罪に問われることのないように,自分が乗っている車の中など至近距離の範囲内で持つことを禁じていたにすぎないものとしか認められない
・ 前記の事実関係によれば,被告人とスワットらとの間にけん銃等の所持につき黙示的に意思の連絡があったといえる。そして,スワットらは被告人の警護のために本件けん銃等を所持しながら終始被告人の近辺にいて被告人と行動を共にしていたものであり,彼らを指揮命令する権限を有する被告人の地位と彼らによって警護を受けるという被告人の立場を併せ考えれば,実質的には,正に被告人がスワットらに本件けん銃等を所持させていたと評し得る
 以上が、判旨のあらましです。
 決定要旨の冒頭で、弁護人の上告趣意の判例違反の主張について、事案を異にする判例を引用するとして却下していますが、その引用された判例は、練馬事件判決(最判昭和33年5月28日刑集12巻8号1718頁)です。巡査の殺害・拳銃の盗取の事案で、順次謀議により共謀関係の成立を認め、実行しなかった者にも共同正犯の罪責を認めたものです。
 この判決では、共同意思の下に一体となって互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなすということが要件とされています(他人の行為を利用し自己の犯罪を実現するとも述べているところは、従来の共同意思主体説的な表現を離れ、犯罪共同説的な方向に移行したと評価されるところでもあります)。
 しかし、拳銃所持の事案では、これらの点を認めることは困難ではないか、だから上告したのでしょう。でも、裁判所は異なる事案としています。おそらく、それは練馬事件での共謀者は比較的対等に謀議をおこなっていったのに対し、本件では、組長を組員という上下関係、しかも暴力団の組織内における上下関係の厳しさなどが異なる点といえます。こうした見方をするなら、上下関係の存在する場合と共謀者が対等な場合とは、その共謀関係の形成は異なるということを示しているとみることができます。スワットに指揮命令する権限を有する被告人の地位とスワットらによって警護を受けるという被告人の立場ということが共同正犯の認定に大きなファクターをしめているのではないでしょうか。

 
14:12:30 | dolus | | TrackBacks
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