Complete text -- "タテマエと実態"

02 September

タテマエと実態

 e-Discoveryについてどう考えますか?というアンケートを、例えば、日本の上場企業に対しておこなったとしたら、どのような回答が寄せられるのだろうか。
 (1) e-Discoveryの意味がわからない
 (2) 将来的に対応する予定である
 (3) 現在、対応を検討中である
 (4) 現在、具体的な対応策を導入している etc.

 電子的な証拠の開示をやろうとして、その企業が保有するすべての電子的デバイスのコピーを提供するわけにはいかないし、したとしても、それが本当にすべてなのかを明らかにできているわけではない。なので、どうするのかが、法的にも技術的にも問題になるのであろう。おそらく、わが国でこの点への対応を真摯に検討している企業は、ほんの数えるほどでしかない。それでも、アンケートをとると、(3)や(4)などの回答が多数を占めそうである。


 で、実は、最近流行の「内部統制」、SOX法も同じようなレベルといってよいかもしれない。このへんはすこし早い時期から問題とされてきたので、きちんとやっています、具体的な導入段階にあるといった回答がたいはんをしめるであろう。でも、それを鵜呑みにはできない気がする。日本では、ふりをするところが多いからである。形だけ整えるのである。もっとも、やろうとしても、能力的にやれない、実行するだけの能力を持った者が少ないという実情もある。これまで、弁護士との取次ぎ役でしかなかった法務部門にいきなりやれといってもできない。アドバイザー、コンサルタントとしての弁護士(法人)、監査法人も、層の薄さは否めない。おそらく数えるほどでしかない気がする。

# SOX法対応は実際にやろうとすると、コストがバカにならないらしい。さらに、一説には、SOX法制定のもとになった元アンダーセンの者たちがSOX法で一番もうけていて、事実上元アンダーセン救済法になっているとか。

 でも、アンケートがあったり、しかもそれが政府がらみであったりすると、結構立派な内容で回答されてくるのである。データ収集と評価にあたって、どうすれば、実態、実情を把握できるのか、ということは、実は難しいのではなかろうか。
 と、とあるレポートを読んだ感想まで。

# ついでにいうと、法化社会と法律化社会は違うのに、法化社会といいつつ法律化社会をめざしているとか、どうも最近は法律の専門家としての弁護士はいても、法の専門家としての弁護士がひじょうに少なくなっているとか、いろいろ根本的な問題もある気がする。と書いているうちに、学部時代、西原先生の「3行以内で述べよ」の意味の話が思い出されてきた。
07:06:14 | dolus | | TrackBacks
Comments

ミスターIT wrote:

ほんでもって、連邦民事訴訟規則が改正されるそうなので、そこらへんもお勉強したほうがよいねとかなると私は、日本の法律の専門家でもなくなってきています。

単なるITリーガルコメンテーターみたいな感じです。
09/02/05 11:01:39

CIA wrote:

先日、観に行った、「見える」経営、「見せる」内部統制 で印象に残った点

8/31/05 13:00-16:50 @日経ホール(日経新聞社8F)
http://www.nikkei.co.jp/ps/...

1.基調講演㈵: H先生@青学 (FSA 企業会計審議会 内部統制部会 部会長)

  日本版基準は、横軸:内部統制の目的は、1)業務の有効性及び効率性、2)財務報告の信頼性、
 3)法令遵守、4)資産の保全、であり、COSO版と比較すると日本版には4)が加わっている。
 縦軸:内部統制の構成要素には、a)統制環境、b)リスクの評価と対応、c)統制活動、
 d)情報と伝達、e)モニタリング、f)ITの利用、の6要素を挙げており、特に、
 昨今の情報化社会に適応するために、日本版では、f)を独自に加えたところが「自慢」である。

 はぁ、、、「自慢」ですか、、、。

2.基調講演 II : N先生@某監査法人・パートナー

  COSOの内部統制(その統合的フレームワーク)によれば横軸:内部統制の目的は、
 1)業務の有効性及び効率性、2)法令遵守、3)財務報告の信頼性、の3つ。
 縦軸:構成要素は、a)統制環境、b)リスク評価、c)統制活動、d)情報と伝達、e)監視活動、の5つ。

 COSOの横軸:1)&2)、および、縦軸:a)〜d)で取り囲まれる立方体の範囲内については
 何とか形になってきたと考えているが、今後、いかにして、横軸:3)、縦軸:e)方向に拡張していくか
 それが課題だと考える。横軸の拡張は、従来型の内部統制の弱点を補うものであり、射程範囲内。
 だが、縦軸の拡張(=監視活動)は、これまでほとんど認知されていなかった分野なので
 何をすれば「内部統制が確立されていると言うのに必要十分な監視活動をしたことになるのか」は
 実務界(=会計士業界)でも未だに見解が定まっていない。

 そうなのよぉ、、、来るCPAの先生ごとに求める内容が違うのよね。ったく!、困る!!

 3.I課長@FSA

 先日出した内部統制部会による公開草案へのヒアリング(8/31締切)についてですが、
 ご存知のように、日本での内部統制法制化の議論は、昨年来数多く発生しました
 有価証券報告書の虚偽記載事案への対応要請がその下敷きになっていることもあり、
 「重大な虚偽の表示につながるリスクに着眼して必要な統制を整備することが要諦」です。
 法制化すると、つい、軽微な物事に対する対策のみを盛り込んだような、いわば、
 「形だけを整える」となりがちですが、それでは意味がないと心して取り組んでください。
 尚、日本版の「特長!」のひとつは、ダイレクト・レポーティングをなくしたこと、です。

 ダイレクト・レポーティングをなくせば、少しは費用は安くなるかもね←監査法人の責任が減る。

 ちなみに。
 タテマエと実態という点ではパネリストの一人、(社)日本監査役協会 会長氏が提出された資料
 「新監査役鑑査基準の実践状況アンケート」が興味深かった。
 同協会の会員会社 4,630社を対象にして、今春に行った調査の結果。
 ご丁寧なことに、監査役と社長の双方に対して、別途、記入を依頼したらしいのだが、
 アンケートに回答した監査役は約75%なのに、社長はその90%以上が回答したらしい。

 ※小生としては、両者の差(15%の監査役)がアンケートに応じなかった理由に興味がありますネ
   忙しくて暇なし(←穴馬)、社長への不満あり(←本命)、そもそも内部統制なぞ関心がない(←対抗馬)。。。

 さて。結果ですが、内部統制システム整備の重要性に対する認識度の項目に、監査役の考える内容。
 1)うちの社長は十分に認識し整備に努めている(38%)、
 2)概ね認識し整備に努めている(36%)
 、、、ということで、実に、3/4もの会社の社長さんは内部統制に理解があるというのが、監査役の見解。

 こんなに多くの社長が認識しているのなら、どうして、西武事件の後、あんなにも多くの
 会社が有価証券報告書を訂正するという事態に陥ったのでしょうかね(爆)?
09/06/05 04:35:30
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