Complete text -- "一見さん、お断り。"

29 May

一見さん、お断り。

 白浜前後から、にわかに匿名でいいのか、なんてことで、騒がしくなっているようですが、刑法の世界では、匿名だからこそ犯罪になるってことがあります。典型的なのは、二項犯罪です。
 食い逃げタイプ(支払段階で欺罔して支払を免れるパターン)の詐欺で、犯罪が成立するのは、まさに行為者が匿名であるからなんでしょうね。二項犯罪が成立するには、一項の財物の移転に相当する具体的、確定的な利益の移転が必要であるとされます。しかも、債権に関しては、法的な処分だけではなく、事実上の利益の移転をも考えるというのです。
 乱暴ですが、簡単に言えば、二項犯罪を認めるには、債権が消滅したのに等しいような状況が作出されることが必要で、代金の支払いに関して二項犯罪が成立するには、事実上の債務免脱ないし事実上の支払猶予といえるかどうかが基準となります。そのとき、行為者と被害者とが知り合いであったり、隣近所であるときは、逃げたからといって、利益の具体的、明確な移転は認められず、まさに一見の客である、タクシーなら客をひろって乗せるわけで、どこのだれかはまずわからない、ということで、逃げられてしまうことが、具体的な利益の移転と評価されることになります。


 でも、普通は、どこの誰だかわからなくても、タクシーは客を乗せますし、飲食店は料理を提供してくれるのです。そこには、ある意味で、店と客との間に信頼関係が構築されているともいえます。匿名であることに怯えていると商売あがったりになります。なかには、対抗措置として、食券方式にしたりということもありますし、ドレスコードによって客を選別することもあるでしょう。タクシーも、某大和のサインを乗せたところみたいに、手を挙げても3台連続で、停まらずに、乗車拒否をするところもあります。そういうのは、個別の対応ですし、客のほうもいやならやめればよいのです。店も客も多様であるからこそ、世の中はおもしろいし、自由な社会だと思うのです。
 ネットも社会の一部なので、いろんなものがあってよいかと思うのですが、なぜに特別扱いしようというのでしょうか。

 飲食関係で、おそらくもっとも匿名性を排除しているのは、祇園のお茶屋さんでしょう。顔なじみでないと相手にしてもらえません。でも、それはそれなりの理由があるようでして、客のお座敷での飲食や芸妓さん、舞妓さんの費用だけでなく、二次会、三次会のバー、クラブなどの酒食とその夜の遊びの代金全てをツケで負担するのだそうです。そうすると、お茶屋さんからみてそれなりの信用がある人でないと客として受けいることができないということらしいです。
 責任の引受(しかも、無限責任として)があるので、匿名性が排除されるのでしょう。

 なので、ぴぃぴぃのσ(^_^)なんぞはなかなか京都では遊べないのですが、幸い、一見さんお断り、ではなかった大市では、食事を堪能できました。表に車が停まるだけで、ささぁっと扉が開いて、下車する前に迎えに出てくるところが、東京の老舗といわれるところとの違いでしょうか。
02:10:51 | dolus | | TrackBacks
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