Complete text -- "瀧川説の財産犯体系"

18 May

瀧川説の財産犯体系

 瀧川説は、財物について徹底した管理可能性説を採るようですが、その財物概念、さらにはその背後にある財産犯論には、注目すべきものがあるようです。
 たしかに財物は管理可能性のある物として、各種エネルギーをも財物とすべきであるとしますが(刑法各論(増補・1968年)108頁)、人の身体が財産権の対象とならないことから、人の労力は除外され(107頁)、暴行、脅迫をもって債務免除の意思表示をさせることが利益強盗にあたる(128頁)とされていますので、債権や役務の提供は利益になるようです(しかし、他方で権利も財物とされている。109頁)。
 ここで注目すべきなのは、管理可能性の意義に関して、「財産権の対象として支配ができる物という意味、即ち、経済的効用のある物」とされ、物の経済的効用(価値)が財物の本質であるとされているところです(108頁以下)。
 
 このような考え方の根拠は、一般的な管理可能説と同様なところにはないようで、むしろ財産犯の保護法益を所有権と理解するところから帰結されるようです。例えば、領得は完全に自己の物とする目的をもって、財物に対する支配を獲得することであるとされますが、それは、現代の社会組織のもとでは、財産権の対象は経済的価値、即ち、経済的利用の可能なことを前提とし、それは所有権の法上の作用を基礎とし、領得は、所有権に基づく法上の支配を、所有権類似の事実上の支配におきかえることであって、事実的または法的の意味にしたがい、所有権の内容を実現することの可能性をいうとされていることにから、導かれています(104頁以下)。
 このことからすると、たしかに管理可能性概念によって、エネルギー一般をも財物として拡張してはいるものの、他方で、財物概念の中核に、所有権の行使可能性を認めるものであるともいえます。そして、後者の点は、現在においても、なお注目すべきことではないかといえます。

 所持説は、経済的利用関係に注目して、物に対する事実的な握持それ自体を保護すべきであるとします。しかしながら、物に対する事実的な握持それ自体がただちに物に対する利用収益の可能性に直結するわけではないといえます。

(つづく)
04:36:22 | dolus | | TrackBacks
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