Complete text -- "バック・お〜らい(+。+)アチャー"

03 December

バック・お〜らい(+。+)アチャー

 大坂高判平成14年9月14日判タ1114号293頁の事件です。俗にいう防衛行為と第三者という論点に関するものです。
 被告人は、本件車両の左後方付近で相手方グループ員から危害を加えられている兄を助け出して一緒に逃げるため、相手方グループ員付近に本件車両を急後退させて、同人らを追い払おうとしたところ、相手方は避けきれず手を車にぶつけてしまったものの、同時に兄を轢いてしまい、死亡させたという事案です。
 この点について
「被告人が主観的には正当防衛だと認識して行為している以上、太郎に本件車両を衝突させ轢過してしまった行為については、故意非難を向け得る主観的事情は存在しないというべきであるから、いわゆる誤想防衛の一種として、過失責任を問い得ることは格別、故意責任を肯定することはできない」としました。さらに、原判決が法定的符合説をとり傷害致死罪を認めた点について、
「被告人にとって太郎は兄であり、共に相手方の襲撃から逃げようとしていた味方同士であって、暴行の故意を向けた相手方グループ員とでは構成要件的評価の観点からみて法的に人として同価値であるとはいえず、暴行の故意を向ける相手方グループ員とは正反対の、むしろ相手方グループから救助すべき『人』であるから、自分がこの場合の『人』に含まれないのと同様に、およそ故意の符合を認める根拠に欠けると解する」
としています。
 防衛行為と第三者という問題について、正当防衛説・緊急避難説を退け、誤想防衛説による故意阻却を認めたわけです。でも、方法の錯誤について、上記のように考えるならそもそも誤想防衛とはいえない、これは実質的に具体的(法定)符合説をとっているというのがゼミでの大方の意見でした。たしかに、攻撃相手と防衛対象を区分するというのは、そもそも客体の個性を構成要件レベルで重視するということになります。だいたい、法定的符合説をベースにしながらも、救助すべき人と防衛行為の相手方とは構成要件的評価からみて同価値でないなどといってしまうということは、消極的構成要件の理論を採って正当防衛と構成要件を一体化する立場にならないかぎり、十分な説明はできない(それでも困難ではないか)ように思います。
 なお、方法の錯誤について、具体的(法定)符合説をとるならば、防衛行為が意図せぬ対象に及んだ場合も、すでに故意犯の成立を認める必要はなく、過失犯の成否の検討ですみます。ということは、誤想防衛説は、故意を抽象化したがために故意犯の成立犯意が広くなって、不都合が生じているので、防衛行為の認識についてもこれを抽象化して、その不都合を解消しているとみることもできます。端的にいえば、およそ防衛行為を認識していたならば、正当防衛の認識はある、と。よくよく考えてみれば、正当防衛説も、およそ一般人が正当防衛と認識しうる状況で行為した以上、正当防衛であるとするわけで、問題処理の局面に相違はあっても、行為それ自体の不当性ないし正当性だけをみていくというアプローチに確たる相違はないともいえます。
 なお、本件では、過失の存否について、「被告人は激しい攻撃を受けて心理的動揺が激しかったと認められ、被告人の過失責任の根拠となる注意義務を的確に構成することも困難」としています。その意味で、事実の錯誤では故意を否定する場合には自動的に過失犯の成立を認めるべきとの見解も否定していることになります。

#本件は、侵害状況という心理的圧迫があったために運転を誤ったわけですし、後ろもそろほど確認できなかったのでしょう。でも、最近は、どうも通常時にうしろを確認できないでバックする人が増えています。きくところによると、縦列や方向転換は卒業検定時に試験されるだけで、2時間の講習だけだそうです。そのため、苦手な人が増えているそうです。学生のなかには免許を取得しても、バック時にどちらにハンドルを切ればよいのかわからない者もいました。
 教習所によるのでしょうが、ポールの見え方や縞模様の段数でハンドルを切るタイミングとまわす回転数を教えて、そういった教習を乗り切らせるところも多いようです(定額制やそれに類似する制度のところはなるべくはやく講習を終了してもらわないと割に合わないとの考えも働くのでしょうか)。でも、こんなことでは、実際に運転するときに困るわけで、実技免除の指定を受けている教習所の講習としては、問題が多いように思います。
 同様のことは、法科大学院や予備校にもいえて、ポールの見え方や縞模様の段数でハンドルを切るタイミングとまわす回転数を教えるような形で試験を乗り切らせても、使えない法曹がたくさん排出されるだけなので、だめなわけです。
10:31:30 | dolus | | TrackBacks
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