Complete text -- "お金のにおいがしない学会"

02 February

お金のにおいがしない学会

 実際には、どこかでお金が動いているのに、それが表面にでてこない学会であった。とかく、日本で理系の学会なり、ワークショップなり、イベントをやろうとなると、企業の商売気が鼻につくようにでてくるものなのだが、そういうのがない。報告内容も、フレームワークやモデリングなどの理論的なものも目立った。日本だと、なんか実利を追求したり、企業の存在が透けて見えるようなものもあったりする。

 日本では、どうも企業の商売のためにイベントをやっているのではないの?と思えるものがあって、研究動向がそれに引っ張られる印象もある。digital forensicsとかいっても、日本の研究層が薄い(情報処理学会でいえば所詮CSECの一部としてしか存在しえない程度だそうだ)のも、商売気が左右しているようにもみえてくる。ツールはすでに米国が先行していて、輸入代行ならともかく、新たに開発しても、ペイしそうにないととか、個人情報保護やSOX法からみで既存のシステムの適当に組み合わせてやっとけばいいやとか、そんな程度のものでしかみていないのではないかといえるところもある。Digital Forensicsにしても、SOXにしても、もうすこし理論的なところ、フレームワークや制度設計などの研究が必要なのだと思うが、どうもないがしろにされているのではなかろうか。それより、もっと全般的に研究の蓄積が必要で、それがないところでいろいろ展開しても、薄っぺらいものしかでてこないだろう(自戒を込めて)。

 こんな話は、この分野だけのものではない。情報法とかサイバー法とかいわれているところも似たようなものだろう。あまりにも実務志向すぎたり、個々の法現象に拘泥したりして、理論的な背景やそのあたりへの研究が吹っ飛んでしまっていたりする。
 Digital Forensicsをみても思ったのだが、学際的色彩が強いところでは、やはりそれぞれの研究者の出自というか本来の研究領域できちんとしたことができているのかということが重要になってくる。これは、オーランドぉで同行している佐々木先生が、「結局、アメリカでも、自分の研究をどう応用していくのかということみたいですね。」といわれていたことの別の側面だと思う。そういった佐々木先生ご自身がしっかりしたバックグラウンドをもたれている。
 情報法やサイバー法も、もともとの法領域のきちんとしたバックグラウンドをもたずに殴り込んでも、そういったことがしっかりしている人には勝てないし、かえって評価を落とすことになっているのではなかろうか。また、実務的にいろいろやるのも必要だろうが、それだけにとどまっていても、意味はないので、しっかりしたバックグラウンドのうえにやっていくことが必要なのであろう(またまた自戒を込めて)。

#なお、刑法学会のときも今回もそうだが、どうも病気でないかと思ってしまう。さすがにさぼることはないが、いつも頭が白くなる。。。
11:53:22 | dolus | | TrackBacks
Comments

悪しき先輩 wrote:

 サイバーやITやデジタルフォレンジックを殊更に強調して営業活動に使っている自称IT弁護士や自称サイバー弁護士も鼻に付きます。これはT先生のように管理人さんと一緒に米国まで出張して技術面や法律面の研鑽に励んでいる弁護士先生が少ないことも一因のような気がします。
 管理人さんやT先生の益々のリードを期待します。トップランナーゆえのご苦労があると思いますが、皆さんが明日のIT法務を作られているのですから。
02/03/06 00:12:25

ミスターIT wrote:

>T先生のように管理人さんと一緒に米国まで出張して技術面や法律面の研鑽

研鑽していたかは別として、面白かったですよ。
同じ分野で興味をもつ、外国の人と話せるのは、一番面白いですね。台湾のNPA の人が話しかけてきたりしましたしね。

でも、来年は、発表が自分の番になっちゃいそうですね。(その前に審査でおとされたりして)
02/06/06 01:23:18

悪しき先輩 wrote:

 デフコンやCCIPS・JTF−CNOで海外の同好の士に会うのは楽しいし啓発されますね。惜しむらくは私の場合、通訳がいないとギャグ以外は意思の疎通ができないことです(泣。
 両先生のご活躍を間近に見て、やっぱり遅ればせながら英会話の学習を再会しようかと思いました(マジ。
02/06/06 08:32:26
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