Complete text -- "中止犯"

20 October

中止犯

 中止犯の法的性格について、ゼミのときはうまくまとめることができなかったので、再度挑戦。また、まとめきらないかもしれません。
 中止犯の法的性格を考えるとき、二つの別の次元のことが一緒に議論されている気がします。一つは、中止犯が成立するとき、犯罪成立要件のいずれかに影響が及んでいるのかということと、もう一つは、中止犯の刑の必要的減免の根拠をどのように考えるのかということです。前者は、違法減少・阻却なのか、責任減少・阻却なのか、一身的刑罰消滅・減少事由なのかという問題で、後者は政策的根拠により説明するのか、犯罪の実質的な観点を持ち出すのかということです。
 たとえば、中止犯を刑罰消滅・減少事由と解する場合であっても、その内実として責任減少という実質を考えることは可能であるということです。刑法105条の刑の免除は、親族による行為について期待可能性(責任)が減少するということで認められたとされていますが、他方で刑罰消滅事由にあたるものとされます。このように犯罪論体系における位置づけとその実質の議論はわけることができます。

 たしかに、刑罰消滅事由や客観的処罰条件などはすべて違法・責任に還元すべきであるとする見解もあります(たとえば、松原芳博『犯罪論と可罰性』(成文堂・1997年))。こういった立場から中止犯を説明するなら、違法ないし責任減少という実質と違法減少・阻却ないし責任減少・阻却という体系的位置づけがリンクすることになるでしょう。それでも、責任減少(阻却)と位置づけても、43条但書が未遂規定にあることからすれば、既遂結果が発生しないという限定は政策的な観点から説明せざるをえず、責任減少(阻却)の内実として責任減少+政策という理由をのべることになります。

 そして、構成要件・違法・責任という犯罪論のいずれかに中止犯を位置づける立場(刑罰消滅・減少事由としない立場)については、犯罪成立(実行の着手)後の事後的な事態(中止)が犯罪成立要件になぜ影響をおよぼしうるのかをきちんと説明することが必要になると思われます。この点についてとりあえず、松宮孝明『刑事立法と犯罪論体系』(成文堂・2003年)307頁参照。

 一応の説明として、{実行の着手により構成される未遂+中止による結果不発生}という複合的な修正された構成要件を示すのが43条但書であるという考えも成り立ちえます。中止犯の一身専属的性格も、実行の着手と中止の結合犯的構造を基礎として、共犯者は実行の着手部分にのみ関与したのであり、中止の部分には関与していないという承継的共犯否定説の逆パターンにより説明することになります。ただ、かなり技巧的なことは否めないわけで、それなら責任減少あるいは違法減少を実態とする刑罰消滅・減少事由という位置づけでもたりる気がします。
03:21:55 | dolus | | TrackBacks
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