Archive for November 2004

29 November

不正融資の相手方と共同正犯の成否

 またもや、共同正犯シリーズです。今回は最決平成15年2月18日刑集57巻2号161頁の住専の不動産会社への融資案件が不正融資で、融資担当者が特別背任(商法486条1項:ただし平成9年当時のもの)に問われた事件です。このとき、融資を受けた会社の代表取締役にも特別背任罪の共同正犯が成立するかどうかが問題とされました。
 大きく分けると、共同正犯性という点と共犯と身分の問題とに分けて考えることができます(ただしこれは単純化しすぎ)が、判旨は共同正犯性について判示しています。

#不正融資の案件は、融資を受けた側についても、共犯の成否が問題となると思うのですが、試験に出しても、このことに触れる者はほとんどいないです。司法試験の答練でもそうです。二重譲渡では第二譲受人の共犯の成否を書くのに、バランスが悪いですね。予備校テキストに毒されているとこういった応用が利かない者が増えてきます。まぁ、判例がでたので、予備校本も追加するでしょう。なお、藤木英雄『刑法演習講座』にはしっかりとこの論点が言及されています。
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02:58:30 | dolus | 4 comments | TrackBacks

22 November

暗黙の了解と共謀

 拳銃所持の共同正犯の判例の続きです。な・が・い(^^ゞ
 最高裁は、共謀ないし共同実行の意思という主観面については「けん銃等所持につき黙示的に意思の連絡があった」としています。共同正犯の主観的な成立要件としてこのようなものでたりるとしたとみるのは、やはり妥当ではないといえます。ここでも、組長とボディーガードという上下関係の存在が大きなファクターを占めているとみるべきではないか考えています。
 なお、この認定の前提となる事実関係について、本判決では、「直接指示を下さなくても、被告人本人のボディガードとしての経験などに基づいて、これを確定的に認識しながら、当然のこととして認容し、そのことをスワットらも承知していた」ということを認めています。この点をどのようにみるのかも、問題となります。黙示的な意思の連絡、暗黙の了解でよいのでしょうか。
# ちなみに、このゼミのオチは、暗黙の了解ということから考えると、橋本派の一億円政治献金について、だれまでが政治資金規正法違反の共謀共同正犯といえるかでした。
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16:03:38 | dolus | No comments | TrackBacks

17 November

共同正犯は共犯か正犯か(続)

 今週から生活環境が少々変わったせいか、午後9時前に睡眠となり、明日へはつなぐことができなかった。ラスト・クリスマスをみることもできなかった。
# WHAM!のLast Christmasは、去年は楽しかったのにということなので、lastは「去年の」という意味が強いのだが、ドラマのほうはどういう意味か、青井の病気とも関係して少々気になるところではある。今週の展開はどうすればわかるのか?

 12歳の息子に指示を与えて強盗をしたという判例である。これについてはいくつか評釈もあり、論文も出ているので、詳しいことはそれらをみてもらえばよい。気になっているのは、子供を利用した犯行について間接正犯を認めた判例を受けて、間接正犯性を否定していること、そして実質的な諸事情(従犯か共同正犯かの区別の議論と同様のもの)を考慮して、共謀共同正犯を肯定したということにある。普通なら、間接正犯か共犯かというときは、教唆犯かどうかということで問題にしてきたのが、この事案では共同正犯かどうかをも問題するに至っている。
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04:16:32 | dolus | No comments | TrackBacks

14 November

共同正犯は共犯か正犯か

 どうでもいいことかもしれないけれど、たまたま同じ週に二つのゼミで共同正犯の問題を扱って気になったので。一つは共犯関係からの離脱、もう一つは12歳の子供に強盗を指示して実行させた親に共同正犯が認められた判例(最決平成13年10月25日刑集55巻6号519号)。

 まずは、共犯関係からの離脱について。
 報告者は、因果関係の解消一本槍でこの問題を処理すべきというある意味では多数説の立場でも、かなり徹底したものです。狭義の共犯だけでなく、共同正犯の場合にも、因果性の解消によって共同正犯からの離脱を判断するということは、共同正犯の成立要件でもっとも重要なことは共犯の因果性ということになります。離脱の問題は成立の問題の裏返しでもあるのです。もちろん、狭義の共犯にあっても共犯の因果性は必要ですから、そうすると、狭義の共犯と共同正犯を区別するのはなんなのかということになります。(明日に続く)
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05:54:41 | dolus | No comments | TrackBacks

04 November

信頼の原則

判例研究で、最高裁平成15年1月24日判決を扱ったときのこと。
#事案は、黄色点滅信号で交差点を通過中、赤色点滅信号を無視して暴走してきた自動車にぶつかり、同乗者を死亡させた運転手に、業務上過失致死罪が問われたもの。

 類似事案の判例として、最判昭和48年5月22日刑集27巻5号1077頁があり、こちらは、信頼の原則を適用することによって、過失責任を否定している。
自車と対面する信号機が黄色の燈火の点滅を表示し、交差道路上の信号機が赤色の燈火の点滅を表示している場合、当該交差点に進入しようとする自動車運転者としては、特段の事情がないかぎり、交差道路から交差点に接近してくる車両の運転者において右信号に従い一時停止および事故回避のための適切な行動をするものと信頼して運転すれば足り、それ以上に、あえて法規に違反して一時停止をすることなく高速度で交差点を突破しようとする車両のありうることまで予想した周到な安全確認をなすべき業務上の注意義務を負うものでなく、当時法規所定の徐行義務を懈怠していたとしても、この場合における注意義務違反の成否に影響を及ぼさない。

がその要旨である。
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