Archive for 10 June 2005

10 June

防御的緊急避難・対物防衛

 対物防衛を正当化事由のどの領域にわりふるのか、ということは、従来は、客観的違法論と主観的違法論、あるいは、規範違反説と法益侵害説の対立として議論されてきました。このような理論構成は、正当防衛の要件としての侵害の「不正」がア・プリオリに規定されるという発想にあるものといえます。しかしながら、正当防衛の成否により、犯罪の違法性が左右されるからといって、かならずしも、正当防衛の要件における「不正」(ないし「違法性」)が犯罪の違法性に直結している必要はないともいえます。
 ここでは、正当防衛と緊急避難の原理的な相違を考慮することのほうが重要ではないかといえます。もっとも、一部の学説にあるように、どちらも利益衡量のみによってその正当化を考えるというのであれば、実際のところ、緊急避難と正当防衛の相違は量的な違い程度のものでしかなく、質的相違はないともいえます。また、社会的相当性があるというのも、同じことでしょう。このこと以上に、社会的相当性の存否について、その実質的な判断を覆い隠してしまっているのでは、感覚的判断をしているだけでしかなく、説得的な根拠を構築することは困難です。さらに、このような理解には社会的相当性の概念史的な問題もあるといえます。

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03:54:03 | dolus | 1 comment | TrackBacks