Archive for 21 May 2005

21 May

blogとロールズ正義論

 匿名性に関する議論を聴いていてちょこっと思ったのが、ロールズの正義論でした。ロールズの考えがどうのこうのなんて、とても無理なのです。そうではなく、ロールズの正義論にみられる方法というか議論の手法というのが、ちょこっと頭に浮かんだのです。

 昔は、正義とは何かとか議論されていましたし、ちょっと前までは、正義論を論じる正しい方法はなにかという議論が盛んでした。でも、ロールズの正義論では、その出発点は、各個人のもっている正義感で、各人多様な正義感をお互いにすりあわせていきながら、一定の方向を見いだしていこうというように議論を転換したように思います。
#本当は違うのかもしれません。法哲学者からみると、ちがうぞという異論があるでしょう。


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10:17:26 | dolus | No comments | TrackBacks

法律の「立ち位置」?

 法律に立ち位置があるなんて知りませんでした。もしあるとすれば、それは上位規範である憲法の原理なのでしょう。あるいは、法律が紛争解決のためにあるとか、行政・司法を規制する機能があるとかということでしょうか。

 法的な議論あるいは問題解決において、もし「立ち位置」があるとするば、それはまさに具体的な解決基準に関する立場=基準の提示でしかないのです。しかし、法的議論で重要なのは、そのような問題解決基準の背後において、どのような利益考量をしているのか、制度的な背景(歴史的な背景や比較法的な背景など)をどのようにふまえているのかということです。これらを考えるときに、どのように問題をとらえるのかという問題の切り口もあります。たとえば、プロバイダ責任を通常の共犯論という切り口から攻めるのか、不作為犯からせめるのかということです。しかし、このことも「立ち位置」ではないでしょう。
 
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09:58:14 | dolus | 2 comments | TrackBacks

自由・責任・コミュニティ(続き)

 匿名性の議論においても、法律家ないし法学者らしからぬall or nothingの議論しかしない人が、この世界には多いようですし、概念をきちんと明らかにしないまま、あやしげなまぜこぜの議論をして、独りよがりになっていることも多い気がします。
 たとえば、情報発信の局面での匿名性の是非は、結局はそのような情報発信によってコミュニティが形成されているかどうかというところにあります。そこで、弱い形か強い形かはともかく、コミュニティの形成される中では、自生的な秩序が形成され、その秩序のもとでコミュニティが運営されていくことになります。そのような状況では、コミュニティの形成度合いに応じて、構成メンバー間に信頼関係が形成されていくことになります。このようなことは、ネットワーク外の社会でもなされていることであり、特別なものではないのです。
 問題は、そのような部分社会としてのコミュニティの形成およびその内部でのルールが法とぶつかり合うときどのように対処するのかということになってくるのです。しかし、この場合、当該コミュニティが匿名性を是認するものであったとしても、そのこと自体が法と抵触しているわけではなく、そのコミュニティの活動が法と抵触しているのであって、まず最初は、匿名性とは分けて議論することが必要です。

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09:32:17 | dolus | 5 comments | TrackBacks

自由・責任・コミュニティ

 某弁護士は、言葉尻をとらえられるのがいやだからブログをしないそうです。あまのじゃくなので、というわけで、シンポジウムでのいろんな人の言葉尻をとらえてみました。
#タイトルは、なんか法哲学のモノグラフィのタイトルみたいですが。自由だけでなく、責任が大事などという発言があった気がしますが、でも、近代法の自由というのは、かならず対概念として責任があったはずなのです。一部団塊の世代およびそのジュニアでは、自由と責任が対概念ということを無視してきたのかもしれません。

 ネットワーク上の不当な行為についての責任を問題にするとき、えてして多いのは、民事責任と刑事責任を一緒くたにして議論するというもので、情報法やネットワークの法律問題に詳しいという(自称・他称)弁護士さんたちでも、まぜこぜにしていることが多いです。ちょっと考えればわかるのですが、それではきちんとした法的議論にならないはずです。
 たとえば、車を盗まれ、あるいは他人に貸していて、そのときに交通事故で人が死傷した場合、車の持ち主は、民事責任を問われ、被害者側から損害賠償請求されることがあります。しかし、現に運転していない者に業務上過失致死傷罪を負わせるなどということはないでしょう。


 
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09:10:08 | dolus | 4 comments | TrackBacks