Archive for 03 December 2004

03 December

違法と責任

 個々の人にとってみれば、犯罪が成立するのかしないのかということに関心があって、犯罪が成立しなかった場合に、それが違法阻却によるのか、責任阻却によるのかということは、問題にならないのかもしれません。でも、刑法では、違法と責任は区別して論じられることが多いのです。
 端的にいえば、もしある行為が違法と評価されるならば、その行為は誰もしてはいけないよ、と宣言して、知らしめる必要があります。他方で、違法でない、正当化されると評価される場合には、その行為はしてもよいのだと宣言して、知らしめることになります。
 違法性の実質を法益侵害という点から構成すると、行為を違法と評価することは、当該行為によって侵害された法益は保護されるべきであったと宣言することになります。逆に、行為を正当と評価することは、当該行為によって侵害された法益は侵害されてもやむを得ない、侵害は甘受しないといけないと宣言することになります。

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バック・お〜らい(+。+)アチャー

 大坂高判平成14年9月14日判タ1114号293頁の事件です。俗にいう防衛行為と第三者という論点に関するものです。
 被告人は、本件車両の左後方付近で相手方グループ員から危害を加えられている兄を助け出して一緒に逃げるため、相手方グループ員付近に本件車両を急後退させて、同人らを追い払おうとしたところ、相手方は避けきれず手を車にぶつけてしまったものの、同時に兄を轢いてしまい、死亡させたという事案です。
 この点について
「被告人が主観的には正当防衛だと認識して行為している以上、太郎に本件車両を衝突させ轢過してしまった行為については、故意非難を向け得る主観的事情は存在しないというべきであるから、いわゆる誤想防衛の一種として、過失責任を問い得ることは格別、故意責任を肯定することはできない」としました。さらに、原判決が法定的符合説をとり傷害致死罪を認めた点について、
「被告人にとって太郎は兄であり、共に相手方の襲撃から逃げようとしていた味方同士であって、暴行の故意を向けた相手方グループ員とでは構成要件的評価の観点からみて法的に人として同価値であるとはいえず、暴行の故意を向ける相手方グループ員とは正反対の、むしろ相手方グループから救助すべき『人』であるから、自分がこの場合の『人』に含まれないのと同様に、およそ故意の符合を認める根拠に欠けると解する」
としています。
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