Archive for December 2004

18 December

可罰的違法性の理論

 判決文の詳細はわからないのですが、久々に懐かしい概念が判決で使用されたようです。イラク派兵反対のビラを自衛隊の官舎へ配布するための敷地への立入について住居侵入罪が問われた事案で、どうも裁判所は可罰的違法性がない(記事によると「刑罰に値するほどの違法性はない」)として、無罪の判決を下したようです。この点について若干質問を受けました。
 可罰的違法性というと、一厘事件しか思い起こせない人も多いかもしれません。もしかしたら、学部の刑法の講義ではこの点だけを述べて終わりということも多いかもしれません。実際、私の講義でも、ほとんどやりません。というのは、(少なくともカリキュラムの上ではまだ履修していない)憲法の人権論をやっていないと十分理解できない判例を扱うことになるからです。
# 同じ理由で、罪刑法定主義のところも、やりずらいものがたくさんあります。
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22:27:35 | dolus | 20 comments | TrackBacks

04 December

スマイル0円

 財産上の利益とは?というとき、よく有償の役務がこれに含まれるといいます。タクシーとか電車などの交通機関の利用は、運行主体からすると運送サービスを提供していて、これに対価性があることで、財産上の利益になると考えるわけです。なので、役務の提供であっても、有償でない、対価を払わないものは、財産上の利益とはいえなくなると解されています。
 でも、どこまでが料金に含まれるのかということはそんなに明らかではないところもあります。例えば、レストランで料理を注文して食事をして料金を支払うというとき、食事代金はどこまでをカバーしているのでしょうか。料理はたいへんよかったけれども、ウェイターのサービスは最悪だったので、その分の代金は払いたくないなんて思うことがよくあります。ちょっと高級な店では、サービス料を別にとっていたりします。このようなとき、料理の代金はちゃんと払ったけれども、サービス料をだまして免れた、あるいは、接客がきわめて悪かったのですごんでみせてサービス料をまけさせた、などというとき、詐欺罪や恐喝罪が成立するのでしょうか。
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05:19:02 | dolus | 1 comment | TrackBacks

03 December

違法と責任

 個々の人にとってみれば、犯罪が成立するのかしないのかということに関心があって、犯罪が成立しなかった場合に、それが違法阻却によるのか、責任阻却によるのかということは、問題にならないのかもしれません。でも、刑法では、違法と責任は区別して論じられることが多いのです。
 端的にいえば、もしある行為が違法と評価されるならば、その行為は誰もしてはいけないよ、と宣言して、知らしめる必要があります。他方で、違法でない、正当化されると評価される場合には、その行為はしてもよいのだと宣言して、知らしめることになります。
 違法性の実質を法益侵害という点から構成すると、行為を違法と評価することは、当該行為によって侵害された法益は保護されるべきであったと宣言することになります。逆に、行為を正当と評価することは、当該行為によって侵害された法益は侵害されてもやむを得ない、侵害は甘受しないといけないと宣言することになります。

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15:49:14 | dolus | No comments | TrackBacks