Archive for November 2004

22 November

実行行為っていらないのですか?

 刑法総論の授業で、こんな質問もらいました。
 指定教科書をなるべく講義内容に近いものにしたせいか、実行行為が書いていないということにとまどいを感じてのもののようでした。個人的には、そんなものいらないといってもよいのですが、まぁ、いろいろ説明するとき、実行行為という言葉を使うと便利なんで、一応使っています。でも、実行行為の説明をきいて、行為それ自体をみて、なにが実行行為なんてわかることはない、とわかれば十分です(そうじゃないという人は多いでしょうが)。どのような結果を惹起したのかによって、実行行為というのが決まるということです。
 犯罪論の体系も、didaktischな機能しかないという人もいるくらいで、実質的な観点が重要です。なにがなんでも、実行行為にこだわって犯罪論体系を構築するというのは、判例・学説の動向からすると、かなり難しいとは思います。そうじゃないという立場からは、どこまで通用するのか徹底してもらいたいのですが、そうもいかないようです。間接正犯で実行の着手を非利用者の行為に認めたり、原因において自由な行為で、間接正犯類似説を採らないということは、実行行為概念が維持しえない証左だと思っています。
# 土曜日の会合で、S先生は、実行行為に残された機能は、説明的ないし教育的機能だけしかないかも、ということをいわれてました。慎重な方なので、私みたいに安直に断定されない(^^ゞ
05:10:19 | dolus | No comments | TrackBacks