Archive for May 2005

31 May

工藤静香の理論

 ゼミでいったら女子学生を中心に受けたので。。。
 実務では、目配せによっても共謀関係が認められ、共同正犯とされ、このようなMUGO・ん…でも共謀を認める考えを指しています。
ここまでがゼミでの話だったので、以下少々敷衍しましょう。命名を思いついたオリジナルは、悪しき先輩さんです。

 正確には、共謀共同正犯の成立要件としての共謀にかかる工藤静香志向理論といいます。本来、共同正犯は共謀共同正犯を認めるとしても、その正犯性のゆえに、共謀の認定は正犯としての処罰に値する実体が必要です。しかし、実務上、共謀関係は、「目と目で通じ合う」ことによっても認められることがあります。おそらくは、「そうゆう仲」であることを背景にして、場合によって、目配せ等あうんの呼吸による共謀を認めているのでしょう。このようなあうんの呼吸によって共謀関係を認める以上、反対に、共謀関係からの離脱も、あうんの呼吸によって認めることが妥当であり、それを因果性等を理由にして頑なに拒否するのは、理論的な一貫性を欠くものといえます。



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23:25:44 | dolus | 5 comments | TrackBacks

29 May

最良の刑事政策はよい教育政策にある

 ,,Die beste Kriminalpolitik ist eine gute Sozialpolitik.''
これは、リストがDer Zweckgedanke im Strafrechtのなかでいった言葉(のはず)です。それから1世紀以上のちに、現在のわが国の状況をみて、西原先生は、その古稀祝賀パーティの席上、表題のように述べられました。
 その本意はどのようなものかはわかりませんので、以下は私なりの理解です。
 教育といっても、学校だけでなく、家庭、地域社会等いろいろな局面があるので、どこかだけでやるというものでもないのです。本当は、全体的な構想を示したりすることが必要になってきます。わが国の場合、現場での裁量がきわめて小さかったり、中央指向的な地域もあったりとしますので、政府のほうから綱領的な指針、具体的な施策等必要に応じて実施していくことが必要かもしれません。この意味で、教育「政策」なのだと思います。


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15:53:32 | dolus | No comments | TrackBacks

一見さん、お断り。

 白浜前後から、にわかに匿名でいいのか、なんてことで、騒がしくなっているようですが、刑法の世界では、匿名だからこそ犯罪になるってことがあります。典型的なのは、二項犯罪です。
 食い逃げタイプ(支払段階で欺罔して支払を免れるパターン)の詐欺で、犯罪が成立するのは、まさに行為者が匿名であるからなんでしょうね。二項犯罪が成立するには、一項の財物の移転に相当する具体的、確定的な利益の移転が必要であるとされます。しかも、債権に関しては、法的な処分だけではなく、事実上の利益の移転をも考えるというのです。
 乱暴ですが、簡単に言えば、二項犯罪を認めるには、債権が消滅したのに等しいような状況が作出されることが必要で、代金の支払いに関して二項犯罪が成立するには、事実上の債務免脱ないし事実上の支払猶予といえるかどうかが基準となります。そのとき、行為者と被害者とが知り合いであったり、隣近所であるときは、逃げたからといって、利益の具体的、明確な移転は認められず、まさに一見の客である、タクシーなら客をひろって乗せるわけで、どこのだれかはまずわからない、ということで、逃げられてしまうことが、具体的な利益の移転と評価されることになります。


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02:10:51 | dolus | No comments | TrackBacks

まちゃまちゃ

ひとつ!と、摩邪風にやろうとは思ったけど、どぎつくなりすぎるのでやめ。
# でも、一定年代以上だと、ひと〜つ、となると、人の生き血をすすり、てなるのかも。
まぁ、あんまりなめてかかると痛い目を見るかもしれないというお話です。

「職務質問は強制処分」と、大学の先生をなめてかかっていた学生たちがそろって答えととか。どうも、行政警察と司法警察という言葉を知らないのか、警職法をみたことがないのか、よくわかりませんが、ごく基本的なことも知らず、えらそうにしていたそうです。なぜ、職務質問がらみの一連の判例が問題となっているのかという問題の所在自体がわかってないのでしょうね。

はじめてききました。訴因維持命令。ちなみに、ATOKの誤変換で、訴因いじめ異例。たしかに、訴因をいじめるのは異例なことでしょう。いずれにせよ、このようなことを平気で答案に書いてくるそうです。
現行刑訴法のどこをどうひっくり返したらこのような概念を導出できるのか、あるいは、だれかこんなことをいっている学者がいるのかとあちこち調べまくったけれどわからなかったそうです。で、ひょっとしたら、ひょっとするということで、ある本をみたら、書いてあったとか。なんの論理も理由づけもなく。自分の頭で考えずに盲信すると足下をすくわれるのです。


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00:57:54 | dolus | No comments | TrackBacks

28 May

瀧沢説の財産犯体系(続)

# しばらくほったらかしていたのですが、ちょっとだけ続きを。

 所持説は、経済的利用関係に注目して、物に対する事実的な握持それ自体を保護すべきであるとします。しかしながら、物に対する事実的な握持それ自体がただちに物に対する利用収益の可能性に直結するわけではないといえます。やはり法的な世界では、法的な正当性に裏付けられてはじめて経済的経済的な利用収益が可能なのではないでしょうか。法主体としての個人に当該財物の所有権が帰属することによって、個人はその財物を経済的に利用することができるのであり、財産犯の法益侵害性は領得行為によって、所有権の帰属を阻害することにあると解されます。
 この意味で、領得行為は所有権を侵害する行為であり、所有権侵害とは別に領得行為の意義を認めること(例えば、林幹人)は不要ではないでしょうか。


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